快速「あめつち~木次線~」グリーン券

あめつちグリーン券

観光列車「あめつち」の木次線版となる「あめつち~木次線~」のグリーン券です。
かつての観光列車「奥出雲おろち号」の後継列車と位置付けられていますが、出雲市始発だった「奥出雲おろち号」と比べ、こちらは運転区間が米子~出雲横田となっています。

「奥出雲おろち号」指定席券
プロローグ 出雲横田の温泉旅館「斐乃上温泉・斐乃上荘(現在宿泊休止中)」に宿泊予定で、車を軽く走らせて出雲坂根駅へ。 そこに入ってきたのが木次行き「奥出雲おろち号」でした。 本日が運転初日ということも...

出雲横田以南は1エンジン車でもあるキハ40が入線できないため、出雲横田折り返しのようですが景色のハイライトが過去に紹介したとおり出雲坂根~三井野原なので、ちょっともったいない気がします。

ただし、「あめつち~木次線~」は出雲横田以北でも空転等で運転休止が発生することがあります。11月にかけては紅葉のシーズン=空転のシーズンなので気になるところではありますが・・・

出雲横田から乗車の場合、松江・出雲市方面から訪問した場合「行きのあめつちに乗るしかない」という縛りがあります。宍道から出雲横田に行く一番列車が「あめつち」でこれに乗るしかないからです。正確には別の方法がありますが、それは後述します。
また、行きの「あめつち」で出雲横田に来ても、出雲横田でやることがなく帰りの「あめつち」で戻るしかありません。
結局のところ「あめつち」で出雲横田に来て、目の前にハイライトがあるのに「あめつち」で戻るしかないというかなりめんどくさい状況になっています。
後述しますが、「奥出雲おろち号」に比べて乗車率が伸びない理由はこのあたりにありそうです。

いろいろあまのじゃくに行こう

始発の備後落合行き

木次始発の備後落合行き。学生が主な客層ですが、学休日の車内は客は自分だけ。青春18きっぷ期間外の朝の備後落合行きは学生以外はほとんど客はいません。

あめつち往復でもよかったのですがあまりにも芸がないので車で木次駅に向かい、木次駅から備後落合行き1番列車で備後落合往復することに。
平日ならば学生が出雲横田まで乗車しておりかなり賑やかですが、祝日は学生の姿はなく客は自分ひとり。出雲横田からも自分ひとりでいよいよ終点まで貸切運行か?と思ったらまさかの八川駅で観光客が乗車。出雲坂根、由木でも観光客や鉄道ファンの乗車が。

それでもガラガラな車内で出雲坂根~三井野原のおろちループが満喫できました。
青春18きっぷ期間中でも学生以外で客が10人を超えることはまずないので、のんびりと木次線の旅を楽しみたい場合はこの始発列車は有用です。
備後落合からの折り返し列車は三次・新見方面から乗り継いできた鉄道ファンが乗車して7人程度と若干増えた形で出雲横田駅に到着しました。

出雲横田

出雲横田駅を発車する備後落合発木次行き。このラッピング車両もすっかりなじみのものに。

出雲横田で1時間半ほど時間ができたので、奥出雲そばの名店一風庵へ。開店1巡目に入れたのはよかったのですが、オーダーしてから40分以上待っても蕎麦は出てこず、タイムアップ。
ある程度予想はしていたけれどどうしても時間制限ができる木次線でそば屋めぐりはかなり無理がありますね(悲)

なかなかうまくいかないものです。

出雲横田駅駅舎

出雲横田駅の駅舎は神社のようなの重厚な構えで有名。出雲大社と同じくしめ縄もあります。

腹を空かせて出雲横田駅に戻ります。出雲横田駅は神社のような重厚な面構えをした立派な駅で、出雲大社よろしくしめなわも駅入り口に吊り下げられています。

あめつちが入線していて、かなり賑やかな状態に。出店も出ています。

たったらー号

生山から出雲横田へ向かう「たったらー号」。これを使えば特急停車駅の伯備線生山駅から出雲横田に向かえます。

出雲横田駅にジャンボタクシーを使った「たったらー号」が到着。これは生山駅と出雲横田駅を結ぶタクシーで、これを使えば「あめつち」往復以外で出雲横田から「あめつち」乗車可能となります。ただし、お値段もそこそこしまして、上り「あめつち」に接続する生山発出雲横田行きが3500円。下り「あめつち」から受ける出雲横田発生山行きが途中観光もついて7000円。
自分はちょっとパスかな。

あめつち

出雲横田駅に停車中の「あめつち」。青い車体が映えます。

出雲横田では発車10分前に車内に入ることができます。客を見るとほとんどが行きの「あめつち」で来た客のようです。マスコミで木次線の「あめつち」で出雲横田でみんな折り返してかえっていくという記事がありましたが、見た感じそのとおりかなあ、と。

車内

「あめつち」車内。木次線内の出雲横田以北は基本的にどちら側でも車窓の優劣はありません。というか、そこまで印象的な景色もありません。。。

車内は6割ほどの入り。車内で地元観光協会の方が観光ガイドをやるスタイルは従前と同じ。ただし、全車グリーン車であってもワンマン運転です。車掌がいないため車内できっぷを買うことができないので注意。

亀嵩を通過。亀嵩そばを食べにきたと思しき観光客がホームで手を振ってくれましたが、通過のため、そばの受取はできません。ちょっと残念。
最初の停車駅は出雲三成。ここで、駅内の「仁多特産市」で買い物タイム。

出雲三成駅

出雲三成駅は出雲横田駅と違ってかなり近代的な駅舎。特産品売り場があり、駐車場もあるため車で訪問する観光客が多いです。

一斉に店に入って買い物タイム。ただ、世相からか(?)米が売れています。2kgどころか、5kg買って「あめつち」の荷物置き場に置いている人もいたのにはびっくりしました。
ここで売られている米は「仁多米」と呼ばれ、「東の魚沼コシヒカリ、西の仁多米」と言われるほど高品質で全国に知られています。

自分はというと、先に出雲そばを食いはぐれたためここで食料調達も考えたのですが、あらかた売り切れててパン類がメイン。まあ仕方ないかとカレーパンと「出雲まんずっ」を購入。

ハイボール

カレーパンとまんじゅうとハイボール。なかなかシュールな組み合わせ。

出雲まんずっ」は盆やお彼岸のときにお墓に供えるいわゆる「法事まんじゅう」。そういえば今日はお彼岸ということをすっかり忘れていました。
当然のことながら季節商品で盆、お彼岸以外ではなかなか見かけませんが、最近はふるさと納税の返礼品に採用されるなど、法事以外にもじわじわと知名度が上がっている模様。

車内の売店では新製品としてあめつちハイボールが売られていましたが、法事まんじゅうにハイボールってなかなかシュールな組み合わせです。

出雲三成駅を発車。木次線は確かにローカル線ではあるものの、北海道みたいな人口希薄地帯というわけではなく、宍道から木次までは松江自動車道もありますし、駅周辺はそれなりに街になっています。
しかし、何十回も訪問して改めて感じるのは木次線沿線が「鉄道が要らない街づくり」に仕上がってしまい、これを覆すのは無理なんじゃないかなと。

宍道駅から山陰本線に入ります。宍道湖を見ながら松江駅に到着。ここでほとんどの乗客が下車してしまいました。というのもここで30分停車で、後続の特急や普通に抜かれるため、基本的にみんなそっちに移動してしまうからのようです。

自分はというと流石にまんじゅうとカレーパンだけでは物足りないので、松江駅で駅弁を購入。

VIVANT弁当

VIVANTのコラボレーション駅弁。中身は要は赤飯。どうも劇中で使われた赤飯を再現したもの・・・らしい。

TBS系「日曜劇場」で放映されたVIVANTの劇中で使われたお赤飯を模した弁当だそうです。ほぼお赤飯だけですが1300円とやや高額。
自分は全くドラマを見ないためふーんなんですが、刺さる人には刺さるのでしょうか。
ただ、お赤飯自体は冷えてても非常においしくいただきました。個人的には塩ゴマはなかったほうがいいかな。

松江発車後は淡々と進み、終点米子に到着しました。

懸念される木次線の将来

以前も似たことを書いたことがありますが、正直な話木次線についてはかなり将来的には厳しく見ています。

なんというか、JR西日本、沿線自治体、そして地元住民の連携が全く取れておらず、方向性が全く見えません。
今回の「あめつち」にしても、基本的に出雲横田往復するしかないというのは致命的です。自治体では「あめつち」接続の観光コースを作ったものの利用者がほとんどないとのことですが、そりゃそうです。今の観光客が求めているものと根本的に違いますからね。

昭和の時代ならばともかく、今の世の中はインターネットでいくらでも情報が入ってきます。そんな目の肥えた観光客が求めているのは「自分の興味のあるものを見たい」んですよね。
なので観光タクシーや観光バスといったお着せのものでは「タイパが悪い」と敬遠される傾向にあり、興味ないところに寄らされても「時間の無駄」と考えます。

となってくると鉄道のダイヤや自分の足で動ける二次交通が重要になってきます。
まず「あめつち」については、出雲横田到着後出雲坂根方面への接続がなく、結局約2時間後の備後落合行きに乗るしかありません。この列車は宍道駅始発なので、出雲横田から乗ると激込みで座れないことほぼ確定なので、あまりお勧めできないです。
そして、米子行き「あめつち」に至っては「たったらー号」以外だと「あめつち」で往復するしかないという非常にもったいない状態になっています。

さらに致命的なのは2024年9月より、奥出雲町内のバスを一手に引き受ける奥出雲交通が日曜・祝日全便運休になってしました。「あめつち」が走るのは日曜・祝日なので、事実上駅降りると足がないという状態に。
奥出雲交通は地元の足だからと言われるかもしれませんが、どこにそんな縦割りなこと言える余裕があるんですか?
折角おろちループや鬼の舌鼓、日本三大美肌の湯と知られる斐乃上温泉へのバスがあるのですが、日曜・祝日は足がなくなります。

正直乗り鉄の自分としても今の木次線で奥出雲観光をやろうとしても、ここまで観光客に厳しい状況では「やめとけ、レンタカーでいけ」と言いたくなります。だって使いようがないもの。
なので木次線の流動は18きっぷで木次線を通過するだけにとどまり、なかなか実需要が増えないのではないか、と思います。
これから新そばのシーズンで奥出雲町のそば屋では大行列となって大賑わいになりますが、残念ながら鉄道でそば屋めぐりする人はほとんどいないでしょう。時間の読めないそば屋と、本数の少ない木次線では相性が悪すぎるので。

個人的にはJR西日本と県及び沿線自治体が責任の押し付け合いになってなかなか協力せず、それが今のいびつな状態になっているのではないかと思います。
末端の地元の人たちは非常に親切で、そして熱心なのですけどね。

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