特急「36ぷらす3」特急券・グリーン券(株主優待)

36ぷらす3特急券・グリーン券

JR九州は数多くのD&S列車(デザイン&ストーリー列車)を走らせていますが、この「36ぷらす3」もそんな列車の一つです。
ただし、スケールがD&S列車で最大級で、一週間かけて九州一周するスタイルの列車になります。月曜に博多を起点に佐世保往復から鹿児島本線を南下して鹿児島中央、宮崎、大分、門司港とめぐり、博多に戻ってきます。

最高峰の料金とサービスとして「ななつ星 in 九州」がありますが、これにはちょっと手が出なくても「或る列車」そしてこの「36ぷらす3」は割とお手軽に利用できるのではないでしょうか。
「36ぷらす3」については、専用チケットで乗車する場合と通常の乗車券、特急券、グリーン券で乗車する方法があり、後者については株主優待が適用できるので今回の旅に組み入れてみました。

黒い787「36ぷらす3」 | JR九州
コンセプトは「九州のすべてが、ぎゅーっと詰まった“走る九州”といえる列車」。これまでのD&S列車とはひと味違った、新たな旅の楽しみ方をご提案します。

日曜の運転区間は大分~博多。
一般販売向けの指定席は一か月前の発売開始時に瞬殺かな?とおもいきや意外と余裕でゲット。ただ運行開始日当日は満席で、定番の観光列車としてすっかり定着した感があります。

一般販売向けはグリーン料金ですが、「36ぷらす3」専用のグリーン料金が適用され、通常のグリーン料金よりやや割高な設定になっています。このため株優半額の威力はそれなりに高いかと。

黒い車体と金ぴかな車内

36ぷらす3全景

大分駅に入線した「36ぷらす3」既存の787系の改造ですが、真っ黒な車体に金色が映えます。

7/11の記事から続き)

ホームに真っ黒な車両が横たわっていました。787系電車は先のにちりんで南宮崎から乗ってきましたが、車体塗装が違うだけでかなり印象が変わってきます。
真っ黒な車体に金色の文字がより特別感を引きだたせてくれます。

イベントカー

4号車は「マルチカー」となり、車内イベントでの会場になったりバーカウンターになったりします。

マルチカー車内

車内はソファや椅子などが配置されています。天井が鉄道車両らしくないなあ。奥に見えるのはバーカウンターですが、この日は使用されませんでした。

車両は6両編成で、このうち2両が個室車両(専用チケットのみ)、2両がリクライニング車両で、うち半分がマルスに収容されて一般向けに販売されています。

残りの2両のうち1両は「マルチカー」と呼ばれ、「BAR36ぷらす3」と呼ばれるバーカウンターのほか、各種車内イベントなども行われます。それ以外はフリースペースとして自由に利用できますが、この日の利用客は割とお行儀よく譲り合って利用していました。
内装は鉄道ファンならだれでもわかる木を多用した水戸岡デザインですが、天井の照明や床の文様などは他のD&S列車とは一線を画す感じとなっています。

カフェ&個室

3号車はビュッフェとセミコンパートメント。787系登場当初のビュッフェを復活させました。丸い天井がビュッフェ部分になります。

ビュッフェ

ビュッフェの構造は昔の「つばめ」で運用されていたころとほぼ同じレイアウトですが、客が手に取れる冷蔵庫が追加されています。丸い天井がビュッフェに似合います。

セミコンパートメント

こちらはセミコンパートメント。一人での利用も可能です。7/11の記事のセミコンパートメントを改装したものです。

一方、3号車はビュッフェとセミコンパートメントとの合造車。改造元はもともとビュッフエとセミコンパートメントだった車両のうち、ビュッフェ部分を客室に改造したもので、いわばもとに戻ったとも言えなくもないです。ただし、窓配置は客室時代のままでその前のビュッフェ時代とは異なります。
しかしカウンターの配置は、昔のビュッフェとかわらず、客室時代に存置された準備室はそのまま生かされました。一方で、以前の一部車両のビュッフェにあった腰掛は設置されず、一応カウンターはあるものの基本的に自席やマルチカーで召し上がるスタイルになっています。
一方で、客が自由に取りだせる冷蔵庫が設置され、アルコールや飲み物などが常時おかれてていつでも購入できるようになっていました。

基本的に車内はワゴンによる販売は行っておらず、たまにバスケットに商品を詰めて巡回する以外は供食体制はコースに含まれる弁当等以外はこのビュッフェのみ。
商品は九州を一周する列車らしく、九州各地の名産品やお土産などがメイン。宮崎ひでじビールが醸造元の36ぷらす3のオリジナルビールもあり、早速購入。苦味が強いセッションIPAで自分は好みではありますが一般受けはどうなのか。ただ苦味が強いということは、甘味とがっつり合いそう。
一方で、ひでじのフルーツビール「九州CRAFT日向夏」もおかれていて、苦いビールが苦手な人はこちらになるでしょうか。
そのほか変わったものでは、五島手延べうどんや鶏カレーといった小腹の空いたときに食べられるメニューもあり、かなり充実してました。
メニュー自体は「九州のモノ」にこだわってますが、価格は通常の車内販売とさほど変わりないようです。

一方、3号車の残り半分はセミコンパートメント。
種車のセミコンパートメントを改装したものです。
「36ぷらす3」直前に乗車した南宮崎~大分間の「にちりん4号」ではこの改装前のセミコンパートメントに居座っていましたが、そのときと比べるとかなりゴージャスになったものの、大きな変化はないかな、と思ったり。

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5号車車内

5号車の車内。1+2のリクライニングシートが並びます。シートピッチは普通車時代のままで実は通常のグリーン車より狭かったりします。

6号車

6号車車内。こちらも5号車と同じリクライニングシートですが、床面は畳が敷き詰められており、靴を脱いで上がります。個人的には長時間乗車の場合は「靴を脱ぐ」はありがたかった。

グリーン券で乗車できる5号車、6号車は1+2のリクライニングシートが並びます。シート自体は九州新幹線800系の普通車指定席に近いでしょうか。ただし、乗車時間が長めなのでマガジンラックが大型だったり、ドリンクホルダーがあったりテーブルが大きめだったりします。
一方でシートピッチは普通車時代の1000mmのままで、リクライニングもそれほど倒れません。そのためシートのグレード自体は他のJR九州のグリーン車と比べると実は劣るのですが、全体的にゴージャスな雰囲気がそう感じさせないつくりになっていました。
787系特有のハットラック式荷棚は健在。こちらも細かい文様が描かれておりよりゴージャスに。もちろん最近改装された車両らしく、座席にコンセントや車内WiFiも完備しています。

5号車、6号車のグリーン券枠は両方の車両で半分ずつが割り当てられていますが、5号車と6号車の違いは6号車は床面が畳敷きであること。このため、客室に入る前に靴を脱いでデッキ近くの靴箱に入れておく必要があります。
この靴箱付近が渋滞しやすく客室に入るのに手間取ることがあるのですが、入ってしまえば畳の感覚とあわせて開放感があり、個人的にはありがたかったです。このため、個人的なおすすめは5号車よりも6号車になりますでしょうか。
なお、コンパートメントの1号車も畳敷きになっています。
車掌などは、1号車、6号車を通り抜けるときは靴を抱えて歩くことに。

ここまで「36ぷらす3」をざっと紹介しましたが、どうしても耐え難い点が一つ。窓枠に設置された障子が、半分しか開かないこと。障子だから当然だろうと言われればそれまでなんですが、景色も半分しか見えないことになり、これって不満にならないのかなあと思ったり。
個人的には水戸岡デザインではほぼ例外なく窓が小さくなる傾向にあり、基本的に「車窓を楽しむ」乗り鉄としては相容れない部分ではあったりします。

下車観光を楽しむ

杵築駅

杵築駅に停車した「36ぷらす3」ここでは駅ホームで名産品などが売られていました。

大分駅を定刻に発車し、障子を開けてしばし大分湾を眺めると別府に到着。
大分より別府での乗車のほうが多く感じられるのは観光列車だからか。

車内の説明、車両の説明、そして車内イベントの案内があり、次の下車停車駅は杵築駅と告げられました。
杵築は大分県でも別府の北、国東半島の一部を形成しています。駅名標にお城が描かれているとおり、松平氏の城下町として江戸時代までは付近一帯の中心都市だったそうです。
ここで撮影タイム兼ホームでの買い物タイム。大分県特産のしいたけが売られてましたが、気温が上がってきたこともあってアイスキャンデーが爆売れ。自分も1本購入。先頭車付近でアイスを舐めながらぼーっとしていると、後続のソニックが猛然と駆け抜けていきました。

ここから先は立石峠となり、トンネルもある山間部に入っていきます。途中で単線だったり上下線が離れたりする山間部を駆け抜けて、平坦部にきたと思ったら柳ヶ浦。ここから先は平坦区間となり疾走すると次の下車駅中津に到着です。

中津

中津駅の駅名標。耶馬溪とかの景勝地としても知られてますが、最近は中津からあげのほうが有名かな。

中津駅も城下町中津の中心駅にあたり、高架化された立派な駅です。
ここでは地元フラダンスの歓迎や、お土産の販売などがありました。もちろん中津からあげも販売中。一つ買ってもいいかなと思ったけど、分量が多く一人では厳しいため断念。一人でも食べやすいようにカップからあげにして売ってくれないかな。
そしてなぜかリポビタンDの配布が。これは中津とは関係なく本日が「父の日」だからそうです。

WEST EXPRESS 銀河」ほど極端ではないにしても、「36ぷらす3」も自社内で完結させず、地元自治体とタイアップして盛り上げていく手法をとっており、今後のお手軽版観光列車の標準スタイルになっていくのではないでしょうか。

7/15の記事に続く)

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