かつて、新大阪~博多間に、WESTひかりなるものがありました。
WESTひかりは、0系の中古を寄せ集めたものですが、2×2のゆったりシートに乗り得列車として6両から始まったこの列車は12両になりました。
それが昇華したのがこの700系「ひかりRailStar」です。
2000年に登場し、指定席は2×2を維持。当時の700系「のぞみ」と同じく最高時速285km/h で走行して「のぞみ」に抜かされない列車、として人気を博し、
新大阪~博多間は1時間にのぞみ3本、ひかりRailStar1本の1時間4本のフリークエントダイヤを構成してライバルの航空機を圧倒、京阪神と北九州間で新幹線の独占状態を作り上げた立役者となっています。
なかには「のぞみ」よりも早かった「ひかりRailStar」もあり、安くて速くて豪華な列車でした。
山陽新幹線内は「のぞみ」「ひかり」「さくら」とは別扱いになっており、案内も「ひかりRailStar」となっています。
ちなみにJR東海管轄の新大阪駅では「ひかりレールスター」の表記はなく、ただの「ひかり」でした。
側面には「Rail Star」のロゴマークが。
かつては先進的な試みが行われ、
旅指南という沿線の情報が得られる端末サービスや、レールスターネットという無線LANによるコンテンツサービスなど、21世紀初頭のまだスマホがほとんどなかった時代に一歩先を見据えたサービスを行っていました。
一世を風靡した「オフィスシート」
そんな「ひかりRailStar」ですが、大々的に発表されたのが「サイレンスカー」と「オフィスシート」です。
そのうち、オフィスシートは、車内でノートパソコンをひらいて仕事する人向けに、コンセントと大型テーブルを設置したものです。
現在こそ、特急列車でコンセントやパソコンなどが置ける大型テーブルの設置は当たり前になってきていますが、それを鉄道車両として大々的にアピールしたのがこのオフィスシートではないでしょうか。
この席は通常の座席とは別枠として発売されました。
きっぷのA席の横に「O」(オー)の文字が入ってますが、これがオフィスシートになります。
また、予約の際にも「オフィスシート」を指定する必要がありました。
なお、「オフィスシート」は壁際席のうち進行方向に壁がある席になり、テーブルが後ろにある席は「オフィスシート」にはなりませんでした。(ただしコンセントは使えます。)
オフィスシートは横幅的にはA4まで可能です。また、テーブルの縦方向に余裕があり、ノートPCを広げてもその後ろにものを置けたりしました。
このオフィスシートとコンセントの発想は、立ちどころにほかにも波及し、700系16両編成にもこの大型テーブルとコンセントを付けた編成が登場。
また、これ以降に登場したJR西日本の在来線特急はほぼ例外なくこの車端部の大型シートとコンセント設置が定番になりました。
客室コンセントにいたっては、このスマホ時代に必須設備となった感もあり、有料列車のほとんどに設置されるようになっています。
さて、令和の「RailStar」ですが、案内表示や案内放送も「RailStar」のままでした。
2000年から山陽新幹線の主力として活躍してきましたが、2011年の九州新幹線開業とともに、RailStarの大半は「さくら」に移行。本数が激減してしまいました。
現在残っているのが、「ひかり590号」とこの「ひかり592号」です。山陽新幹線を全線走破するのは「ひかり592号」のみ。
そもそも700系自体がそろそろ引退の時期を迎えている気がします。
消えた「オフィスシート」
さて、このオフィスシートですが、2022年9月30日限りで設定自体がなくなってしまいました。
もともと「ひかり590号」「ひかり592号」のみになっていたのと、現在はシートマップで座席を指定するのが主流となってきたため、わざわざ分ける必要がなくなってきたためと思われます。
現在のオフィスシートは、通常の座席扱いで販売されています。
今e5489を見ると、「オフィスシート」はなくなっていました。
あと「ひかりレールスター」の文字が消えて、ただの「ひかり」になってしまったのもちょっと寂しい感がします。
ひかりRailStar自体臨時のひかりで起用されることもなくなってきており、おそらく先は長くないのではないかと思われます。
試し乗りはお早目に。
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