東武鉄道のSL「大樹」のSL座席指定券です。東武鉄道は2017年に日光・鬼怒川の活性化と誘客を目的としたSLの運行を開始。JRではない大手私鉄での運行ということで世間を驚かせました。
以降、ほぼ毎日下今市を起点に日光、もしくは鬼怒川方面に運行しています。
当時はJRや地方私鉄でのSL運行が重荷になっていたほか、12系、14系客車といったSLが牽引する客車も急速に数を減らしていた時期だったため、そこを突く形で東武が新規参入しています。
結局SLは事故頻発で守りの経営にせざるを得なかったJR北海道と、財政負担が厳しくなった真岡鉄道から購入。客車も「はまなす」廃止で浮いた14系と「ムーンライト高知・松山」廃止で浮いた12系を購入ということで、JRで廃車予定だった車両をうまく回しています。
乗客の反応は上々で週末は基本的に満席が多く、平日もそれなりに乗車があるなど日光・鬼怒川方面の旅行のスパイスとしては上々なのではないでしょうか。
首都圏に近い上に日光・鬼怒川と知名度抜群の観光地を控えているだけに、この大型投資は成功の部類に入ると思います。
なお、SL大樹の乗車には乗車券のほか「SL座席指定券」が必要となり、専用のホームページからの申し込みが主体となります。

「購入」と「予約(のみ)」に分かれており、「購入」はインターネット上で購入するもの、一方「予約」はインターネット上では予約だけして、駅の窓口で購入と同時に引き換えをするものです。
窓側とか座席指定ができる「購入」のほうが便利で、おそらく大半の人がこちらを選ぶと思います。一方「予約(のみ)」の場合、予約時点で座席指定ができず、駅での引換時に座席が確定するスタイルですが、今回のようなきっぷが渡されます。
このほか駅で直接購入しても今回のようなきっぷになります。
きっぷは「大樹」のロゴとSLの動輪が描かれた独特のもので、味気ない感じの東武の磁気券類において、かなりの出来栄え。これだけでも乗車記念になるのではないかと思います。
下今市の車庫にて
(6/30の記事から続き)
日光駅から下今市駅に戻り、東武のSLのねぐらとなっている下今市機関区へ。ここは広場やSL資料館なども併設され、下今市駅に有効な乗車券、もしくは下今市駅の入場券を持っていると見学することができます。
SL資料館で一通りみてからテラスで眺めると転車台と扇形車庫が。ゼロからここまで整備してしまう東武の本気度を象徴する光景なのではないでしょうか。
しばらくすると、3番庫より、汽笛が鳴ったかと思うとSLが出庫してきました。本日の機関車はC11 123号機。もっともこの機関車は元国鉄ではなく滋賀県の江若鉄道出身で、「C11 1」だったという変わり種。たしか江若鉄道時代は「ひえい」の愛称で運行されたはず。
その後北海道の雄別鉄道、釧路開発埠頭と点々として廃車後は個人宅に置かれていたものを東武が動態保存用の3両目のSLとして、2022年に運行開始しています。
一方、客車は14系と12系の混成の3両編成。窓枠の形と車体高が違うので一目でわかります(笑)
登場当初は国鉄時代と同じブルーでしたが、現在は茶色に塗られています。1,3号車が14系で2号車の赤帯が入っている車両が12系ですね。
機関車は客車と連結後、いったん客車を浅草方面に押してから、ゆっくり下今市駅ホームに入線します。
ただダイヤの都合上からか入線が発車3分前となり、SL写真を撮るほうも大忙し。
しかしスペーシアX以上に存在感を放つのは、やはりそれがSLの人気というものなのでしょうね。
自分も写真を撮ると早足で列車に乗り込みました。
ゆったりのんびり鬼怒川の旅
指定された号車は2号車。2号車は12系客車でもともとは「ムーンライト高知・松山」のグリーン車だった経歴のある車両です。
現在は茶色に赤帯となり、サボ受けが設置されて行き先サボが入れられています。「鬼怒川温泉・東武日光」の行き先がちょっと新鮮。
車内はボックスシートが並びます。もっとももともとはグリーン車用のリクライニングシートだったはずなので、このボックスシートはどこからかの移設なのでしょう。また、ボックスシートには大型テーブルが設置されています。
荷だな、座席上の取っ手の形状が違ったり、なぜか肘置きがなかったりしますが、全般旧国鉄形車両に近い雰囲気を出すのに成功しているのではないでしょうか。
2号車の片側車端部には開放タイプの展望デッキが設置されています。風を受けながら景色を楽しむことができ、気分転換にはもってこいなのですが、約30分強の乗車ではちょっともったいない感じ。
案の定かなりの混雑でもうちょっと距離を走らせてこそ真価が発揮できそうな設備ではあります。
12.5kmを35分で結ぶので、表定速度は時速20kmちょい。実際スピードはかなりのんびりで、おそらく最高でも時速30kmぐらいです。
SLやまぐちのような高速運転はないので、物足りなさはありますが、感覚的には遊園地のアトラクションのようでこれはこれで悪くはありません。車内ではイベントも行われ、子ども連れを中心に受けていました。
もっとも12.5kmといっても景色は起伏に富んでおり、最初のうちは関東平野の北端を走行しますが次第に山が迫り、鬼怒川を渡ると両側に山が迫る谷間を走行することになります。
とはいっても35分はあっという間。終点の鬼怒川温泉に到着しました。
やっぱりアトラクション・・・なのかも。
鬼怒川温泉駅に到着すると、機関車は切り離されて転車台に移動します。
わずか12.5kmの距離であってもバック運転せずに、いちいち方向転換するあたりお金のかけ方が違いますね。
この鬼怒川温泉駅で転線して移動するSLを撮影する人はあまりおらず、東武のSLを撮影する場合の穴場かもしれません。
ではいなくなった人は・・・というと、鬼怒川駅前に設置された転車台に集まっていました。
わざわざ駅前に線路を引き込んで転車台を設置するあたり、東武の力の入れ方もわかりますが、その目論見通り?なのか円形の転車台の周りを人がぐるっと取り囲むようにして見物していました。
機関車がぐるぐる回り、注目度は抜群。
進行方向逆向きになるとSLはそそくさと転車台から出てイベントはお開きとなりました。
どうしても「SLやまぐち」や「SLばんえつ物語」とかと比べると迫力という面ではいまいちではあるのですが、
日光・鬼怒川というと首都圏から来やすい行楽地ということで、SLを一種の「アトラクション」と割り切って運行している東武の姿勢は、ある意味動態保存のあるべき姿を示したのでは?と思いました。
(7/4の記事に続く)
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